きだみのる著『気違い部落周游紀行』(冨山房百科文庫、1981年)。著者は太平洋戦争を挟んだ20年間ほどを東京都八王子市にある戸数14軒の部落で隠棲するように暮らした。ここではその部落での生活を紀行風に描いている。初出は雑誌『世界』(岩波書店)1946年9、10月号。
きだみのる著『気違い部落周游紀行』(冨山房百科文庫、1981年)
きだみのるは隣人たちの因習的な思考や行動の様式を旅行者のような目で描写し、様々な考察を加えてゆく。そして、戸数14戸の部落から得た知見を日本人全体に敷衍してゆく。
隣人たちの行動から説明を始めると話しが長くなるので、その意味するところを表している部分を2箇所引用する。
「ギリシャの寓話作家は、人間を二つの振り分け荷を背負って人生を歩くものとして表象している。前の荷には他人の欠点を、背後の荷には自己の欠点がつまっている。従って自分の欠点は本人には見えないが、他人のものは目の前にぶら下がっているというのである」(P92)。
「一般に社会の観察、特に政党や政府の特定の観察に際して、忘れてならない尺度はそれが公平無私に見え、社会全体の利益になるように見えれば見えるだけ、それによって誰が一番の利益を掴むかを知ることが、事をよく分かるのに肝要である」(P95)。
きだみのるは本名山田吉彦。1895年、奄美大島生まれ。
百科文庫解説

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