リー・ルイジュン監督による中国映画『小さき麦の花』(2022年)。現代中国の農村に暮らす貧しい夫婦の物語。原題: 隠入塵煙、英題: Return to Dust。写真は夕暮れの道を歩くヨウティエ(ウー・レンリン、左)とクイイン(ハイ・チン、右)。
2011年、中国西北地方にある甘粛省の農村。ヨウティエ(ウー・レンリン)は中年に差し掛かった貧しい農民。両親と長兄、次兄は既に亡く、四男だったヨウティエは三男ヨウトンの家で下働きをする居候だった。彼は無口で優しく、働き者だった。
ヨウトン夫婦は厄介払いのためにヨウティエ(右)を見合いさせる。見合いの相手のクイイン(ハイ・チン、左)は身体に障害を持ち、たびたび失禁した。周囲からは虐げられ、内気な性格だった。彼女もまた兄夫婦の家の居候で厄介者だった。
ヨウティエとクイインは結婚する。式は挙げなかった。写真は結婚写真。
二人はそれぞれの兄の家を出て、空き家に住む。
二人は一頭のロバとともに新生活を歩み始める。このロバは準主役のような存在だ。
二人はヨウティエの両親と兄二人の墓前で紙銭を燃やしながら、結婚の報告をする。
段ボール箱で鶏の卵から雛を孵化させる。
畑を耕し、燕麦を植える。
日干しレンガで家を建てる。
優しいヨウティエは家にツバメの巣を備え付ける。
クイイン(右)は「思いもしなかった。人生の中で自分の家を持てて、自分の布団で眠れるなんて」という。ヨウティエ(左)は「トウモロコシが売れたら年を越す前にテレビを買おう」「それから市の病院に行って、(クイインの病気を)ちゃんと診てもらおう」と話す。
ヨウティエはクイインの手に燕麦の粒を押し当て、花模様を作ってやる。余計なことだが、ヨウティエ役のウー・レンリンの本業は現役の農民、一方、クイイン役のハイ・チンは女優。それが手に現れている。
クイインはヨウティエの帰りが遅くなると、懐中電灯を灯して迎えに出る。
ヨウティエは雛から育てた鶏が初めて産んだ卵を体調の良くないクイインに食べさせる。
ヨウティエとクイインは慎ましくも満ち足りた日々を送る。写真は家の前で夕食のうどんを鶏にも分け与えながら食べる二人。以下略。
現代中国の貧しい境遇の農民夫婦の生活を描きながら、人間の優しさや夫婦の愛のかたちを素朴に表現している。中国社会における貧富の差なども浮き彫りにされているが、この作品にとっては副次的なことだろう。
映画『小さき麦の花』予告編 - YouTube
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