ヘッセの読書術

ヘルマン・ヘッセ著、フォルカー・ミヒェルス編、岡田朝雄訳『ヘッセの読書術』(草思社、2004年)。ヘルマン・ヘッセの読書に関するエッセイ集。原著(1977年)からの抜粋版。翻訳はなめらかで読みやすい。

『ヘッセの読書術』(草思社、2004年)
『ヘッセの読書術』(草思社、2004年)

「新聞は書物の最も危険な敵の一つである。それが少額の料金で一見したところ多量の記事を提供して、読む者に過大な時間とエネルギーを要求するからだけでなく、むしろ新聞は個性のない多種多様な内容で何千人もの読者の趣味と、新聞を読むだけにはもったいないはどすぐれた読書能力をスポイルするからである」(「書物とのつきあい」、P14)。

「無益であり、危険でもあるのは、たとえばたえず新しい未知の刺激を求めて、今日はペルシャの童話、明日は北欧の説話、あさっては現代アメリカの怪奇小説でそれが見つかることを期待し、たくさんの文学書を性急に貪欲に読みあさることである」(「書物とのつきあい」、P24)。

「結局、よい読者は誰でも愛書家である。一冊の本を心を込めて手に取り、愛することのできる人は、できるならば本を自分のものにして、くりかえし読み、所蔵して、いつも身近な手の届くところに置きたいと思うからである」(「本を読むことと所有すること」、P46)。

「そもそもよい本とよい趣味の敵は、本を軽蔑する人や字の読めない人ではなく、乱読者だからである」(「保養地での読みもの」、P52)。

長い期間に様々な媒体のために執筆した読書に関するエッセイがまとめられている。


ヘッセの読書術 | 草思社

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