袁枚著、青木正児訳注『随園食単』(岩波文庫、1980年)。袁枚(えんばい)は中国清代の文人。若くして官吏となったが38歳で引退し、以後随園と名付けた居宅に住まいした。食通として名高い。『随園食単』(1792年)では当時の中国料理に関する袁枚の並々ならぬ蘊蓄が綴られている。
袁枚著、青木正児訳注『随園食単』(岩波文庫、1980年)
例えば、「生炮鶏(鶏肉のから揚げ)」(P115)のレシピは以下のようになっている。
「小さな雛鶏を小さく方塊(しかく)に斬り、醤油で拌(ま)ぜておき、喫(た)べようとする時に取り上げて沸(に)えた油の内に居れて灼(あ)げ、鍋をおろしまた火に架けて灼げる。続けて三度灼げ、器に盛って、醋(す)・酒・つなぎ粉・葱のみじん切りを用いてこれに噴する」。「噴する」は「注ぎかける」「振りかける」の意。
中国料理はあまり好まない。理由はいくつかあるが、そのうちの一つは油っこいことだ。だが、袁枚はこうしたことに対しても説明を用意している。以下は「似て非なる味を知ること」(P44)。
「味は濃厚(こってり)を要するが、油こくてはいけない。味は清鮮(あっさり)を要するが、淡薄(みずくさく)てはいけない。この似て非なる間隔の一毛一厘の差は、これを誤ると千里も離れることになる」。
随園食単 | 岩波文庫
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