美食の道

立原正秋著、結城信孝編『美食の道』(角川春樹事務所、2006年)。美食家で酒豪としても知られた立原正秋の食のエッセイ集。グルメ文庫の1冊。

立原正秋著、結城信孝編『美食の道』(角川春樹事務所、2006年)
立原正秋著、結城信孝編『美食の道』(角川春樹事務所、2006年)

食に関するエッセイはよく読む。なかでも自分で料理をする人の書いたエッセイが面白い。たとえ名文で綴られていても料理屋の品定めに終始するようなエッセイは読んでいるうちに食傷してしまう(もちろん例外はある)。立原正秋は自分でも包丁を握った。この本にも料理の仕方に触れた部分が多い。また、彼は味覚が鋭いように思う。こういう人の書いた食のエッセイは繰り返し読んで飽きることがない。

「おから」(P28~29)から少し引用する。

「これは家庭で食べる料理である」「料亭で出される卯の花においしかったためしがない」。

(途中、調理法について書いている。)

「これはまったくのいなか料理だが、いなか料理ほどむずかしいのが当世である」。

「私が子供のころ、おからは豆腐屋でただでくれた。近ごろはビニール袋に入れたのを売っているが、あれを買う主婦があまりいないらしい。町を散歩していて、豆腐屋でおからを買っている主婦を見つけると、私は実にあたたかい感情になってくる。こうした主婦の背中には家庭のあたたかさがにじみ出ている」。

立原正秋は大変な自信家で自分が一番偉いと考えているようなところがある。横柄な物言いも多いが、それはそれで面白い。


美食の道|書籍情報|株式会社 角川春樹事務所 - Kadokawa Haruki Corporation
版元品切れ。

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