珍味亭の豚足

2024年9月中旬、久しぶりに西荻窪駅南口の珍味亭に行った。豚の内臓肉の醤油煮や炒米粉(ヤキビーフン)などの台湾料理を出す小体な食堂風の居酒屋。17時半の開店の少し前に着いたら、店主が中に入れてくれた。

赤いデコラ貼りのカウンターの一番奥に腰かけて、瓶ビール大瓶と豚足を頼む。この日は二人で行ったのだが、豚足は半量ずつ二皿に分けて出してくれた(この店では初めての経験だ)。豚足用の醤油だれには以前は小粒のニンニクを叩き潰したものが入っていたが、みじん切りのニンニクに代わっていた。おしぼりは白から色のついたものになっていた。

豚足はおいしかった。だいぶ以前にこの店で隣り合わせた年配のお客さんから「東京の台湾料理屋で出す豚足では渋谷の麗郷とこの店が双璧」と聞いたことがある。このお客さんは1回目の東京オリンピックの頃からこの2つの店を知っているようだった。今の店主の父親で台湾人だった初代が調理していた頃である。今の店主は二代目になる。

酒を紹興酒に切り替え、セロリと魯卵(ロウラン、煮玉子)を頼む。この店の紹興酒の注ぎ方には厚手のグラスに一滴もこぼすことなく表面張力でギリギリまで盛り上がるように注ぐという名人芸が見られたものだが(グラスの下に皿などは置かない)、今夜はグラスの縁よりも1ミリくらい低めだった。さすがの店主も手が震えるようになったのか。あるいはそれだとこぼすような人が増えたのか。セロリに添えられた塩がピンク色の塩に替わっていた。店主に訊くと「白い塩だと年取ってる人が見えないという」「塩があるのに塩をくれとか」「それでパキスタンの岩塩に替えた」という。壁に貼られたメニューを見ると値段はだいぶ上がっている。

この後、木耳肉炒(キクラゲ炒め)も頼んだ。調理場のほうを見ていたわけではないが、往年の父親とよく似た面立ちの三代目候補の息子が調理したものだろう、まだまだ修行が足りていないような出来ばえだった。

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