口之島の盆と十五夜

吐噶喇列島の口之島の伝統行事に関する2回目。口之島は牛の放牧が盛んで、野生化した牛もいる。
口之島の盆と十五夜

旧暦7月になるとご先祖さまが再び島に帰ってくる。写真はお盆の当日(旧暦7月15日)の墓参り。口之島では墓地のことを「テラ」という。昔はここに寺があった。
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土葬の墓には海岸の石が積まれる。墓石は三回忌が過ぎるまで建てない。墓にはご先祖さまのために履き物を置く。
口之島の盆と十五夜

テラの庭には無縁仏のために施餓鬼棚が作られる。施餓鬼棚には無縁仏に供え物があることを知らせる旗を下げる。供え物は「水のこ」という煮物と米の飯である。
口之島の盆と十五夜

テラの庭で男たちによって盆踊りが踊られる。
口之島の盆と十五夜

口之島の盆踊りの動作は舞うというよりは跳び跳ねるという表現が近い。日本の踊りの古い形を残すといわれる。
口之島の盆と十五夜

狂言も演じられる。この演目は鳥を射落とす話の「肥後の国」。以上が盆の行事。
口之島の盆と十五夜

十五夜(旧暦8月15日)の日。各家の縁側にお月様へのお供え物が設えられる。
口之島の盆と十五夜

お供え物は升に収穫したばかりのサツマイモとサトイモを積み上げたものと、皿に奇数個の餅を並べたものである。サツマイモはかつてカライモやハンツと呼ばれ、島の主食だった。
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神棚に置かれた「内神さま」と呼ばれる行燈。口之島ではこの行燈が家の守り神であり、この行燈を通して神様を拝む。
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十五夜には親戚やその家の「内神さま」を信じる「うちこ(氏子)」が集まる。うちこの漁師(左から2人目)はかつて海で遭難し10日目に沖縄に漂着した。助かったのはこの家の内神さまのおかげだという。
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十五夜の日の夜8時。学校の校庭で綱引きが行われる。集落を2つに分けて、蛇に見立てた綱を引きあう。綱が切れると結び直して、また引く。蛇が脱皮を繰り返すように、月が満ち欠けを繰り返すように、生命の再生を願う行事だと考えられる。
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綱引きが終わると相撲が始まる。やはり蛇に見立てた綱で土俵を作り、その中で相撲を取る。聖なる綱で体を浄める行事とされる。
口之島の盆と十五夜

前回同様、NHK『ふるさとの伝承』の「先祖が二度来る島~トカラ列島・口之島」(1997年4月6日放送)による。この番組ではおやだま祭り、盆、十五夜の他にも、牛の放牧、野生の牛、「里のカワ」と呼ばれる泉、田植え(4月中旬)、稲刈り(7月下旬)、サツマイモの収穫(9月)などが紹介されていた。

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