羽田澄子監督による自主制作映画『薄墨の桜』(1977年)。桜の古木とその周りに暮らす人々を取り上げたドキュメンタリー映画。音楽は岩崎光治のギター独奏。羽田澄子は当時岩波映画製作所に所属する会社員監督だった。英題: The Cherry Tree with Gray Blossoms。
薄墨桜(あるいは淡墨桜)は岐阜県本巣市の根尾谷にある。
薄墨桜は樹齢1500年以上のエドヒガンの古木。継体天皇お手植えの桜といわれる。国の天然記念物。
薄墨桜のそばには6軒の農家がある。昔から6軒と決まっていて増えも減りもしない。すべて住吉姓あるいは畑中姓である。この人たちが薄墨桜の日常の世話をしている。写真は石戸宗の祈祷師、住吉平六さん夫婦。平素は山仕事をしている。
どこの家でも毎朝ご飯が炊きあがるとまず御仏飯を取り分ける。御仏飯は仏壇に上げられる。
畑中観一さんの家では薄墨桜の傍らの観音堂にも御仏飯を運ぶ。観音堂には薄墨桜の折れた枝で彫られた観音様が祀ってある。観音堂の御仏飯は夕方下げられる。
畑中観一さんが薄墨桜について語る。薄墨桜は塚の上に植えられたという言い伝えがある。実際、薄墨桜の周辺からは人骨と思われる骨が出た。その骨は近くに住む医者が調べるといって持ち帰ったが、その医者も廃業してしまい、その後の所在は分からない。
薄墨桜は1940年代後半に枯れかかった。そのときは岐阜市の歯科医で樹木医としても知られた前田利行が若い山桜の根238本を根接ぎして、再生した。
薄墨桜の花は初め薄紅色で、開くにつれて白くなる。
花見の時期には大勢の人が集まる。
桜の花はやがて色あせて薄墨色に変わる。薄墨桜という名の由来ともいわれる。
50年近く前のドキュメンタリー映画。その後、薄墨桜のある一帯は根尾谷・淡墨公園として整備された。
Cherry Tree With Gray Blossoms, The ( 1977) : Sumiko Haneda : Free Download, Borrow, and Streaming : Internet Archive
全編。
コメント