実家の庭の斜面に葛(クズ)が生い茂っている。葛はマメ科の蔓草。夏には辺り一面を覆いつくし、周辺の樹木に丈夫な蔓を巻き付ける。葛が巻き付いた樹木は次第に弱まる。道路沿いなど至るところで葛が繁茂している光景を目にする。盛夏には1日で1m伸びることもあるらしい。大変な生命力だ。除草剤にも強い。明治初期に日本からアメリカに持ち込まれ、その破壊的な繁茂力から、現在では国際自然保護連合の定める「世界の侵略的外来種ワースト100」に含まれている。

庭の葛(だいぶ刈り取った後)
庭の葛

かつて葛の葉は牛馬の餌だった。昔はそのため葛を定期的に刈り取っていた。今は葛の葉を家畜の餌にするという話しはあまり聞かない。葛は伸び放題である。

葛にまつわるエピソードは数多い。葛の葉狐の説話は人形浄瑠璃、歌舞伎、小説、映画、オペラ、落語などの題材になった。葛は秋の七草の一つである。秋の季語である。家紋に使われる。葛の根からは葛粉が作られる。漢方薬の葛根は葛の根を乾燥させたものである。葉や花を乾燥させると葛の葉茶や葛の花茶になる。葛の葉は傷の止血に用いられる。葛の蔓の繊維から葛布が織られる。蔓を利用して籠などが編まれる。庭にはびこる葛には困っているが、風雅で有用な植物でもある。

コメント