夕顔棚納涼図屏風

東京国立博物館の収蔵品では久隅守景『夕顔棚納涼図屏風』が一番好きだ。久隅守景は江戸時代初期の狩野派の絵師。生没年は不詳。狩野探幽門下の四天王と謳われ、探幽の姪を娶って、一男一女をもうけた。二人の子はいずれも絵師となったが、息子は罪を犯して佐渡に流され、閨秀画家として名を馳せた娘は同門の塾生と出奔した。守景はこの不祥事がもとで一門を去り、金沢に身を寄せ、晩年は京都に暮らしたという。その生涯について詳しいことは分からない。

『夕顔棚納涼図屏風』は守景の代表作。男女二人が幼子を間に夕顔棚の下で夕涼みする様子が描かれている。男は幼子の親だろう。女については男の妻とする説と娘とする説がある。妻にしては若すぎるようだが、娘だと幼子と歳が離れすぎているから、たぶん妻なのだろう。ただ、女と幼子には守景の不肖の子ども二人の姿が投影されているようにも思う。日常の満ち足りた幸福感は守景自身の求めるところでもあったのだろう。

久隅守景『夕顔棚納涼図屏風』(部分、国宝、東京国立博物館蔵)
夕顔棚納涼図屏風



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