琉球の富

柳宗悦『琉球の富』(ちくま学芸文庫、2022年)。沖縄の織物や焼き物などの工芸、建築、自然、芸能、太平洋戦争以前の状況などについて勉強になった。柳宗悦は美術や民芸の分野に限らず、ものごとの見方が明るい。百年前に書かれたものが全く古びていない。

沖縄では歌や踊りが生活に深く根差して盛んに行われているという指摘には改めて納得した。沖縄から数多の芸能人が輩出され続ける理由なのだろう。

沖縄には古い日本が残っているという指摘も勉強になった。例えば、「日本に於いて現存する各種の地方語のうち、伝統的な順正な和語を、最も多量に有するのは東北の土語と沖縄語である」(P195)。東北の方言に中央で既に失われた古語が残っているのは認識していたが、沖縄もそうなのは知らなかった。どちらも辺境なので、不自然ではないのだが。また、琉装(沖縄の着物)は日本の古い時代の着物の様式を残しているのだそうだ。

『琉球の富』を読みながら、柳宗悦の主張とは離れるが、世界における日本文化と日本における沖縄文化は構造的に似ていると感じた。日本は世界の中では辺境に位置する島国で、古くから周辺の文化を取り入れ、単なる模倣に終わることなく、日本独自の文化を創り上げた。同様に、沖縄は日本の中では辺境に位置する島国で、古くは中国、南方、朝鮮、それに日本本土の文化を取り入れ、沖縄独自の豊かな文化を創り上げた。双方とも辺境の島国であることや自然環境に恵まれたことの影響はあったのだろう。

『鳳凰と花の紅型の型紙』(18世紀、メトロポリタン美術館蔵)
Bingata Panel with Hō-ō Birds and Flowers


筑摩書房 琉球の富 / 柳 宗悦 著
琉球の富

Bingata Panel with Hō-ō Birds and Flowers | Japan (Ryūkyū Islands) | The Metropolitan Museum of Art

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