金子光晴著『マレー蘭印紀行』(山雅房、1940年)。昭和初期に金子光晴と森三千代夫人が東南アジアを放浪した紀行文。英題: Malay and Dutch East Indies Travelogue。
金子光晴著『マレー蘭印紀行』(中公文庫、1978年)
巻頭の「センブロン河」の冒頭を引用。
川は、森林の脚をくぐって流れる。……泥と、水底で朽ちた木の葉の灰汁をふくんで粘土色にふくらんだ水が。気のつかぬくらいしずかにうごいている。
ニッパ-水生の椰子-の葉を枯らして家根に葺いたカンポン(部落)が、その水の上にたくさんな杭を涵(ひた)して、ひょろついている。板橋を架けわたして、川のなかまでのり出しているのは、舟つき場の亭(ちん)か、厠か。厠の床下へ、綱のついたバケツがするすると下ってゆき、川水を汲みあげる。水浴(マンデ)をつかっているらしい。底がぬけたようにその水が、川水のおもてにこぼれる。時には、糞尿がきらめいて落ちる。
(引用ここまで)
マレー蘭印紀行 -金子光晴 著|中公文庫|中央公論新社

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