私の食物誌

吉田健一著『私の食物誌』(中広文庫、1975年)。日本各地の旨いものを取りあげたエッセイ集。1971年に読売新聞に連載され、翌1972年に単行本が中央公論社から刊行された。

吉田健一著『私の食物誌』(中広文庫、1975年)
吉田健一著『私の食物誌』(中広文庫、1975年)

巻頭の「長浜の鴨」の冒頭を引用。

 これは琵琶湖にいる鴨のことなのだから長浜でなくてもよさそうなものであるが、どういう訳か長浜の辺で取れる琵琶湖の鴨は旨い。又長浜の鴨と特に呼ばれてその季節には神戸のホテルの食堂などにも出る。広島の牡蠣とか明石の鯛とかいうのと同じことなのかも知れない。勿論冬食べるので、それがどうも厳密に二月一杯のことのようで前に一度それ程とも思わずに三月一日に食べに行ったら何か味が違っていた。
(引用ここまで)

生前の吉田健一とは一度遭遇したことがある。神田神保町にあるビヤホール「ランチョン」でタンシチューを肴に一人で生ビールを飲んでいた。火事で焼ける前の今よりもだいぶ狭い「ランチョン」で、小柄な老店主がカウンターの前に立って店の隅々にまで目を光らせていた頃の話である。


舌鼓ところどころ/私の食物誌 -吉田健一 著|中公文庫|中央公論新社
現在の中公文庫版は『舌鼓ところどころ』と『私の食物誌』の合本になっている。

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