辻嘉一著『御飯の本』(婦人画報社、1960年)。茶懐石の料理人、辻嘉一の著したご飯ものの料理本。装画は棟方志功、題字は松丸東魚。
辻嘉一著『御飯の本』(婦人画報社、1960年)
「序」は獅子文六が寄せている。一部引用。
昨今、米食が何か時代おくれのやうにいはれてるが、飯のうまさを知る者は、冷笑する外ない。飯のやうにうまいものは、もう「三度の飯」ではなく、珍味として、時折り味はへといふのなら、話はわかる。私なぞは、その意味に於て、米食を多食しない。
(引用ここまで)
辻嘉一による「あとがき」からも一部引用。
字が書けない人がないのと同じように、おそらく御飯の炊けない方はありますまい。しかし、字を上手に書ける人が少ないように、御飯を上手に炊ける人も少ないのではないでしょうか。字にお手習いが大切なように、御飯にもお手習いが肝要です。
(中略)
一番おいしいのは米の飯、御飯の中でも塩味のおむすびが一番おいしい─などということばを伺うことがあります。日本人にとって切っても切れない御飯のことを、一冊の本に纏める機会に恵まれたことを有難く思います。
(引用ここまで)
おむすびの作り方について。「おむすびは指先でつくるものではなく、掌と掌をぴったりと密着させる心持ちで、御飯の粒がむすばれるようにつくるのです。掌と掌をあわせるとき、それは神仏に対する敬虔な拍手、合掌などに通じるものがあります」(P82)。
著者近影(東京銀座辻留にて 撮影 佐伯義勝)
手元の本の書名は『御飯の本』(1971年、24版)になっているが、初め刊行されたときは『御飯の手習』だったようだ。手習というと初級者向けが思い浮かぶ。この本は全体としては上級者(あるいはプロ)向けだと思うので、読者が勘違いしないように改題したのだろうか。



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