高坂知英著『ひとり旅の楽しみ』(中公新書、1976年)。旅行に関する経験や考え方を記したエッセイ。旅先は主にヨーロッパ。著者は1917年(大正6年)生まれ。建築、美術、音楽などにも造詣が深い。「宿」「ドライヴ」「見物」「美術と音楽」「中世ー西と東と」「旅の参考書」の6章からなる。書名がまぎらわしいが、「ひとり旅」について書かれた本ではない。版元品切。
高坂知英著『ひとり旅の楽しみ』(中公新書、1976年)
以下は第1章「宿」からの抜き書き。
- 私は原則として宿の予約をしない(P5)。
- 混むにきまっている季節に混むにきまっている場所に出かけない(P8)。
- 自分がその旅に主として期待していること、つまりこれだけはどうしてもと思うことは徹底的に調べて、それ以外のことはむしろわざと調べない(p15)。
- 「ヨーロッパで楽しい旅をしたければ、安いホテルに泊まるに限る。そして安いホテルはどこでも必ず見つかる」(『一日五ドルのヨーロッパ』からの引用、P17)。
- 安い宿では高いホテルよりも一般的により多くの地方性、および人間性を味わうことができる(P19)。
- 私は基本方針としてなるべく安い宿に泊まることを心がけているが、強い個性が感じられるときには必ずしも宿料に拘泥しない(P50)。
その他の章からの抜き書き。
- 一般に役に立たない土地ほど風景は絶景である。役に立てば人間は必ず何かに利用するのである(「ドライヴ」、P107)。
- 旅に出てたのしくあるためには、日常の人生そのものにたのしみを見るということが必須の条件である(「見物」、P117)。
- しつけの悪い子供がいればそばの母親の様子をながめると、似ているのは顔だけではないことも手にとるようにわかる(「見物」、P123)。
- 旅とは現場に立ち会うことなのである(「中世ー西と東と」、P220)。
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