シュワンのカタログ

身の回りには不要なものがたくさんある。捨てなければと思いながら、それも面倒なので、なかなか捨てられない。その一方で、あれは捨てなければよかったと思うものもある。その一つがシュワンのカタログである。

シュワン・カタログ(Schwann Catalog)は1949年に米国のウィリアム・シュワンによって創刊されたレコード(当時はLP)に関する定期刊行のカタログ。創刊当時はクラシック音楽にフォーカスしていたが、次第にポピュラー音楽やジャズなどの収録も増やしていった。1970年代にはカタログは2巻に分割され、月刊のSchwann-1にはクラシックとジャズのすべてのステレオ録音とポピュラーの2年未満の録音が収録され、年2回刊のSchwann-2にはすべてのジャンルのモノラル録音とポピュラーの2年以上経過したステレオ録音が含まれるようになった。1986年にはシュワン・コンパクト・ディスク・カタログと名称を変更し、その後、クラシック音楽のシュワン・オーパスと、その他のカテゴリーのシュワン・スペクトラムに分冊化された。しかし、1985年にはウィリアム・シュワンが引退し、シュワン・カタログも2001年に廃刊された。

シュワンのカタログは新聞用紙のような紙に印刷されたハンディサイズの刊行物で、LPのタイトル、演奏者、収録曲、録音時期など1枚のLPについて数行の説明が細かな活字で印刷されていた。それがクラシックなら作曲家、ポピュラーなどは演奏者のABC順に並べられただけの素っ気ないものだった。ただ、特に輸入盤を購入する際には貴重な情報源だったし、眺めているだけでも楽しかった。

シュワンのカタログは東京では輸入盤を扱うレコードショップの一部で販売されていた。どの店でも入荷は不定期的のようだった。持っていたシュワンのカタログの大半は秋葉原の石丸電気のレコード売り場で購入した。石丸電気は2010年にエディオンに買収された。シュワンのカタログも石丸電気も前後して消えたことになる。

シュワンのカタログはときどき買い求めていただけだ。通算で何冊持っていたかも覚えていない。定期刊行物なので古い分はときどき捨てていた。今は手元には1冊もない。2、3冊は残しておけばよかったと心残りに思う。といいながら、家のどこかから1冊くらいひょっこり出てきそうな淡い期待もある。もし出てきてもかつてのように熱心に読みふけるとは思えないが、捨てることもないだろう。


Schwann Catalog - Wikipedia
写真は1984年12月の創刊35周年特集号。レナード・バーンスタイン、フランク・ザッパ、シンディ・ローパー、渡辺貞夫が表紙を飾っている。
The cover of the Schwann periodical music catalog for December 1984.

SCHWANN CATALOGUES : MusicWeb Encyclopaedia of Popular Music

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