非現実の王国で

ジェシカ・ユー監督によるアメリカ映画『非現実の王国で ヘンリー・ダーガーの謎』(2004年)。ヘンリー・ダーガーの生涯、作品、関係者の証言から構成されたドキュメンタリー。ナレーションは当時7歳の少女が担当した。原題: In the Realms of the Unreal。写真はダーガーの作品。
In the Realms of the Unreal (2004)

ヘンリー・ダーガー(Henry Darger)は米国の作家、芸術家。1892年にシカゴで生まれ、幼い頃から孤児院や精神病院などで育つ。成人後はカトリック病院の掃除夫など下働きの仕事で生計を立てながら、貧しく孤独な生涯を送った。写真はダーガーの住んでいたアパート。
In the Realms of the Unreal (2004)

1973年に同地で亡くなった後、1万5千ページを超える小説『非現実の王国で』や多くが3m以上もある数百枚の絵などの作品群が発見された。今ではアウトサイダーアートを代表する芸術家と目されている。
In the Realms of the Unreal (2004)

主要作品の『非現実の王国で』はダーガーが19歳のときに着手され、60年間にわたって書き続けられた。子どもを奴隷とする軍事国家とキリスト教国との間の戦争を描いた挿絵付きの物語で、主人公はキリスト教国の7人の少女戦士ヴィヴィアン・ガールズである。
In the Realms of the Unreal (2004)

何千ページにも及ぶ日記や自伝も残されている。
In the Realms of the Unreal (2004)

ヘンリー・ダーガーの写真は3枚しか残されていない。隣人たちは「彼に注意を払う人はいなかったわ」「影の薄い人だった」「貧しい普通の人にしか見えなかった」「貧しい老人としか思ってなかったわ」「ひどい引きこもりで」「自分の世界に生きてた」と語る。
In the Realms of the Unreal (2004)

「背は高くないわ」「むしろ小柄だ」「たぶん163~165cm」「165~167cmくらいかな」「見た目は浮浪者よ」「ホームレスに見えた。でも違うわ。貧しかったの」「いつも踝まである第一次世界大戦の軍用コートを着てた」「ほとんど一年中着てたよ」「汚れてあちこち繕ってあったわ」「彼は何でも繕ったの。手先が器用で」「彼なりに見た目には精一杯気を配っていた」。
In the Realms of the Unreal (2004)

ヘンリー・ダーガーは教会に何度も養子縁組を願い出たが、叶えられなかった。写真は1971年のダーガー。
In the Realms of the Unreal (2004)

ヘンリー・ダーガーは独自の制作技法を編み出した。新聞や雑誌の記事、写真、漫画などを毎日切り抜いては古い電話帳に貼っていった。スクラップの収集のためにゴミ捨て場を漁った。それらをもとに絵を練習し、コラージュ、コピー、トレースなどの技法を取り入れた。物語はお気に入りの本から借用した。写真はダーガーの収集したスクラップの一つ、1911年にシカゴで殺害されたエルシー・パローベク(当時5歳)。
In the Realms of the Unreal (2004)

ダーガーが43年間住んだアパートの大家は写真家で美術学校教師のネイサン・ラーナー(右)だった。左は音楽家の妻キヨコ。
In the Realms of the Unreal (2004)

晩年、ダーガーはラーナー夫妻の世話で救貧院(老人ホーム)に入所する。夫妻は掃除のためにダーガーの部屋に入り、膨大な作品を発見する。ラーナーはすぐにその芸術的な価値を認め、その後夫妻は部屋と資料の保存に努めた。
In the Realms of the Unreal (2004)

作品の紹介は割愛する。なお、この映画では一部の絵がアニメーション化されている(こういうことはしないほうがいいと思うが)。
In the Realms of the Unreal (2004)

In the Realms of the Unreal (2004)

In the Realms of the Unreal (2004)

In the Realms of the Unreal (2004)


The Realms of the Unreal (Jessica Yu) - 2004 - YouTube
全編。字幕なし。

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