ガブリエル・ガルシア=マルケスの未完の遺作『出会いはいつも八月』(旦敬介訳、新潮社、2024年)。2014年に亡くなったガルシア=マルケスは晩年認知症を患い、記憶障害に陥った。『出会いはいつも八月』は1999年には執筆に着手していたが、亡くなったときには、未完のまま、いくつかのバージョンの原稿が残されていた。編集者のクリストーバル・ペーラがそれらからこの作品をまとめあげた。
46歳のアナ・マグダレーナ・バッハは美しさと知性に恵まれていた。27年前に結婚したオーケストラ指揮者の夫とは仲睦まじく、二人の才能ある子どもに恵まれた。
母親は8年前に亡くなり、遺言によってカリブ海の島に埋葬された。アナ・マグダレーナ・バッハは毎年8月16日に母親の墓にグラジオラスの花を供えるために一人でその島を訪れるのが慣わしだった。彼女は墓参りを済ませると島のホテルに1泊し、翌朝9時の連絡船で家に戻った。
ある年から、アナ・マグダレーナ・バッハはその島で一夜限りの男を求めるようになった。
『出会いはいつも八月』 ガブリエル・ガルシア=マルケス、旦敬介/訳 | 新潮社
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