口之島のおやだま祭り

口之島は鹿児島県鹿児島郡十島村の島。吐噶喇(トカラ)列島に属する火山島。島の面積は13平方km、周囲は20km。最高標高は628m。2024年4月30日現在で人口は114人、世帯数は72世帯。
口之島のおやだま祭り

吐噶喇列島では本土と南西諸島の両方の影響を受けた独特の風習や行事が見られる。「おやだま(親霊)祭り」は先祖のための正月祝いで、吐噶喇列島独特の「七島正月」という行事のなかの最終日(旧暦12月7日、新暦では1月半ば)に行われる。口之島では生きている人よりも先祖のための正月祝いのほうが盛大である。

おやだま祭りの前日にちまきが作られる。米粉にヨモギや麦粉を混ぜて撞き、ちまき葉(月桃の葉)で巻く。
口之島のおやだま祭り

ちまきは先祖へのお供え物の一つになる。
口之島のおやだま祭り

おやだま様(先祖の霊)は海の向こうから船に乗ってやってくるともいわれる。
口之島のおやだま祭り

この1年に家族が亡くなった初おやだまの家では朝早くからたくさんの料理が作られる。
口之島のおやだま祭り

おやだま祭りの日には仏壇の前に台を置き、できるだけたくさんの料理を並べる。並べられた料理は「宝くらべ」と呼ぶ。
口之島のおやだま祭り

おやだま祭りではタラの枝と松の葉を軒先に刺し、仏壇にも置く。魔除けのためだといわれる。
口之島のおやだま祭り

再びあの世に戻るおやだま様のために「テゴ」という籠にお土産を2つ用意する。お土産を入れたテゴにはサトウキビを添える。これはおやだま様の杖になる。
口之島のおやだま祭り

夜になると初おやだまの家には親戚や故人と親しかった人が訪ねてくる。この日、海は荒れていた。あの世の人には海が荒れているほうがなぎだとされる。訪ねてきた人は「(亡くなった)じいちゃんもいいなぎに恵まれた」と挨拶する。
口之島のおやだま祭り

夜10時が近づくと、人々はそれぞれの家に帰る。10時に公民館のサイレンが鳴り響く。おやだま様があの世に帰る時刻が近づいたという知らせである。以前は鉄砲を撃って知らせた。サイレンが鳴ると仏壇のお茶を入れ替える。サイレンは10時半、11時と3回鳴る。その度にお茶を入れ替える。
口之島のおやだま祭り

おやだま様があの世に帰る時刻が近づく。家族は「天国に上がれよ」と祈る。
口之島のおやだま祭り

家を立ったおやだま様は沖合いのムシクレ瀬に集まり、おやだま船に乗ってあの世に帰っていく。
口之島のおやだま祭り

以上、NHK『ふるさとの伝承』の「先祖が二度来る島~トカラ列島・口之島」(1997年4月6日放送)による。

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