邱永漢『食は広州に在り』(中広文庫、1975年)。1957年に龍星閣が刊行した単行本の文庫化。台湾や中国の食に関するエッセイで最も優れたものの一つだと思う。読んで楽しいし、物知りにもなる。
実業家としての活躍が目立つ後年の著作は失礼ながら粗製乱造の傾向がある。この本はもともと30歳から月刊誌『あまカラ』に連載したもので、さすがに丁寧に書かれている。続編に『象牙の箸』(中広文庫、1975年)がある。内容は本書が優る。
邱永漢が日本の文壇にデビューするきっかけを作った人物に西川満がいる。西川満は会津若松生まれ、台湾育ちの詩人、小説家。日台交流史などを読むと西川満の名前によく出くわす。経済学者の西川潤は息子。西川満は政財界の大物相手の占い師でもあった。西川満も蓄財の才があったなと思い出した。
食は広州に在り -邱永漢 著|文庫|中央公論新社
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