極北のナヌーク

ロバート・フラハティ監督によるアメリカ映画『極北のナヌーク』(1922年)。カナダ・ケベック州に暮らすエスキモー(イヌイット)の生活を記録したサイレント映画。映画史上初のドキュメンタリー映画ともいわれるが、実際はドキュメンタリーとフィクションの要素が入り混じっている。原題: Nanook of the North。写真はブリザードの吹き荒れるなかで朝を待つエスキモー犬。
Nanook of the North (1922)

カナダ・ケベック州北部のアンガヴァ半島。
Nanook of the North (1922)

イヌク族のエスキモーのナヌーク。この作品の主人公。壮年の猟師で妻子と暮らす。本名はアラカリアラックという。
Nanook of the North (1922)

ナヌークの妻のナイラ。本名はアリス。
Nanook of the North (1922)

交易所の白人が持ち込んだ手回し蓄音機に興味津々のナヌーク。この後、レコード盤にかじりつく。
Nanook of the North (1922)

流氷の海でカヤックを巧みに操る。流氷の上を1本の杖を頼りにひょいひょいと歩き、氷の隙間から魚をやすで突く。獲った魚はエラの辺りをかじって活け締めにする。
Nanook of the North (1922)

波打ち際のセイウチの群れに腹ばいで近づき、銛で突く。海に逃げようとするセイウチを浜辺に引き上げる。セイウチはその場ですぐに解体する。
Nanook of the North (1922)

雪の中の穴に潜むホッキョクギツネを手掴みで獲る。毛皮は交易所に持ち込む。
Nanook of the North (1922)

住宅のイグルーを家族総出で作る。山刀で雪のブロックを切り出し、ドーム状に積み上げる。出入口や窓は最後に開ける。
Nanook of the North (1922)

イグルーの中では裸で寝る。服は重ね着している。上半身を脱ぐときは一度にまとめて全部脱ぐ。脱いだ服は毛布のように身体にかける。靴も素足に1回で履く。
Nanook of the North (1922)

家族全員犬ぞりに乗って猟に出かける。イグルー作りもそうだが、生きる術を子どもたちに教える場でもあるのだろう。ナヌークは厚い氷に開いた息継ぎのための小さな穴から海中のアザラシを銛で突く。逃げようとするアザラシは力ずくで引き上げる。
Nanook of the North (1922)

獲ったアザラシはその場で解体し、温かい生肉を食べる。アザラシの肉は最も好まれる。
Nanook of the North (1922)

アザラシの生肉と脂肪(blubber)を交互に食べる。脂肪はバターや調味料のような役割である。家族が食べた後で犬にも与える。犬は生肉に極度に興奮する。
Nanook of the North (1922)

犬ぞりで出かけた猟だが、帰りが遅くなってしまい、家には戻れない。打ち捨てられたイグルーで一夜を明かす。
Nanook of the North (1922)

家族は半壊したイグルーのなかで休む。
Nanook of the North (1922)

犬は野外で凍えながら夜を過ごす(実際は日中撮影しているのだろうが)。一番上の写真も同じ場面。こういう犬を見ると不憫でならない。
Nanook of the North (1922)

『極北のナヌーク』は現在の基準では純粋なドキュメンタリーとはいえない。例えば、ナヌークの一家は本当の家族ではなく映画のために集められた架空の家族である(妻役のアリスはフラハティと内縁関係にあったそうだ)、ナヌーク(ホッキョクグマ)という名前は本名ではなくフラハティがそのほうがエスキモーらしいと付けた名前である、一家の暮らすイグルーは撮影のためのセットである、セイウチ猟には既に銃が使われていたがこの作品では銛を使用している、ナヌークは実際は蓄音機を知っていたが作品中ではわざとらしく驚いている、等々。これらはドキュメンタリーの概念がまだ確立していなかったためとされる。


Nanook of the North : Flaherty, Robert Joseph, 1884-1951. My Eskimo friends : Free Download, Borrow, and Streaming : Internet Archive

Nanook of the North : Flaherty, Robert Joseph, 1884-1951. My Eskimo friends : Free Download, Borrow, and Streaming : Internet Archive
全編。この版ではスタンリー・シルバーマンの音楽、タッシの演奏という組み合わせによる伴奏音楽が付いている。無音よりも伴奏音楽のあったほうが親しみやすい。

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