ロバート・フラハティ監督によるアメリカ映画『極北のナヌーク』(1922年)。カナダ・ケベック州に暮らすエスキモー(イヌイット)の生活を記録したサイレント映画。映画史上初のドキュメンタリー映画ともいわれるが、実際はドキュメンタリーとフィクションの要素が入り混じっている。原題: Nanook of the North。写真はブリザードの吹き荒れるなかで朝を待つエスキモー犬。
カナダ・ケベック州北部のアンガヴァ半島。
ナヌークの妻のナイラ。本名はアリス。
交易所の白人が持ち込んだ手回し蓄音機に興味津々のナヌーク。この後、レコード盤にかじりつく。
流氷の海でカヤックを巧みに操る。流氷の上を1本の杖を頼りにひょいひょいと歩き、氷の隙間から魚をやすで突く。獲った魚はエラの辺りをかじって活け締めにする。
波打ち際のセイウチの群れに腹ばいで近づき、銛で突く。海に逃げようとするセイウチを浜辺に引き上げる。セイウチはその場ですぐに解体する。
雪の中の穴に潜むホッキョクギツネを手掴みで獲る。毛皮は交易所に持ち込む。
住宅のイグルーを家族総出で作る。山刀で雪のブロックを切り出し、ドーム状に積み上げる。出入口や窓は最後に開ける。
家族全員犬ぞりに乗って猟に出かける。イグルー作りもそうだが、生きる術を子どもたちに教える場でもあるのだろう。ナヌークは厚い氷に開いた息継ぎのための小さな穴から海中のアザラシを銛で突く。逃げようとするアザラシは力ずくで引き上げる。
獲ったアザラシはその場で解体し、温かい生肉を食べる。アザラシの肉は最も好まれる。
犬ぞりで出かけた猟だが、帰りが遅くなってしまい、家には戻れない。打ち捨てられたイグルーで一夜を明かす。
犬は野外で凍えながら夜を過ごす(実際は日中撮影しているのだろうが)。一番上の写真も同じ場面。こういう犬を見ると不憫でならない。
『極北のナヌーク』は現在の基準では純粋なドキュメンタリーとはいえない。例えば、ナヌークの一家は本当の家族ではなく映画のために集められた架空の家族である(妻役のアリスはフラハティと内縁関係にあったそうだ)、ナヌーク(ホッキョクグマ)という名前は本名ではなくフラハティがそのほうがエスキモーらしいと付けた名前である、一家の暮らすイグルーは撮影のためのセットである、セイウチ猟には既に銃が使われていたがこの作品では銛を使用している、ナヌークは実際は蓄音機を知っていたが作品中ではわざとらしく驚いている、等々。これらはドキュメンタリーの概念がまだ確立していなかったためとされる。
Nanook of the North : Flaherty, Robert Joseph, 1884-1951. My Eskimo friends : Free Download, Borrow, and Streaming : Internet Archive
Nanook of the North : Flaherty, Robert Joseph, 1884-1951. My Eskimo friends : Free Download, Borrow, and Streaming : Internet Archive
全編。この版ではスタンリー・シルバーマンの音楽、タッシの演奏という組み合わせによる伴奏音楽が付いている。無音よりも伴奏音楽のあったほうが親しみやすい。
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