石垣島の初日の夕食は八重山膳符料理「こっかーら」。石垣市街地に宮良殿内(みやらどぅんち)という観光名所にもなっている王府時代の屋敷がある。今も子孫が住んでいる。この店はその宮良家出身のご夫婦が営んでいる。宮良家には献立を記した『膳符日記』が伝わっている。「こっかーら」の料理はその献立がもとになっている。店名の由来はカワセミの仲間のアカショウビンの方言名。
店は市街地を少し離れた野原のようなところに建つ一軒家にあった。辺りには街灯もなく真っ暗である。庭先にご主人が出迎えてくれた。「東京からですか」「石垣島は初めてですか」と訊かれる。ご主人は「石垣島には何度も来られる方が多い」と話していた。
食事はテーブルと椅子の置かれた2間続きの和室で提供される。接客はご主人が担当していた。料理は奥様が一人で作られているようだ。
この夜の客は2組。隣室の客は高齢のご夫婦だった。ご主人夫婦とは旧知の間柄の地元の方のようだった。奥様も調理場から挨拶に見えられていた。隣室との間には八重山上布が吊るされている。
壁には芭蕉布が掛けられていた。
最初に豆腐ようと漬け物4種が出された。漬け物は右から島らっきょう、ハイビスカス、ローゼル、ゴーヤを甘酢で浅く漬けてある。色合いが美しい。
飲み物は自家瓶で熟成させた泡盛をお願いした。抱瓶型の徳利で供された。小さなお猪口で少しずついただく。
田芋(ターンム)の唐揚げ。半月に切った田芋を素揚げしている。外側には少量の砂糖と醤油をまぶしてあるようで、ほんのり甘くカリッとした歯触りがある。沖縄旅行にはいつも持参する古波蔵保好『料理沖縄物語』(朝日文庫、1990年)では田芋について「一センチくらいの厚さに輪切りにして唐揚げにするのが、食べかたとして適当だ。軽い醤油味にした唐揚げは、重箱に詰める品の一つになっている」と記している。
イラブチャー(ブダイ)、スーナ、長命草の酢味噌和え。スーナという糸コンニャクが枝分かれしたような海藻は初めて食べた。少しコリコリした歯ごたえがあり、おいしいものだった。和名をユミガタオゴノリというらしい。水っぽさのない甘みを抑えた酢味噌和えだった。
ジーマーミ(落花生)豆腐。箸をあてるとフルフルと揺れる。赤い琉球漆器の器に純白がよく映える。添えられたおろし生姜の量も丁度よい。
味噌ラフティー。島豚の三枚肉を醤油ではなく味噌で味付けし、素揚げした茄子を合わせている。豚は飼料に泡盛のもろみ(ご主人は酒粕といっていた)を加えた飼料で育てているそうだ。脂身がおいしい。
島野菜の炊き合わせ。手前にオオタニワタリの新芽が立ててあったのだが、うかつにも写真を撮る前に肝心のオオタニワタリを食べてしまった。オオタニワタリは少しヌメリがあり、ツルムラサキにちょっと似ている。白い野菜はアダン。筍を柔らかくしたようなサクサクした食感がある。他には揚げ麩、干し椎茸、がんもどき。薄味なので素材の味がよく分かる。
ズゥーシー(ジューシー)、ゆし豆腐、もやしとキュウリのピーナツ合え。ズゥーシーは餅米で作られていた。珍しい。赤飯と中華おこわの両方の特徴を備えたような味だった。もやしは、沖縄では常識なのかも知れないが、頭の皮と尻尾を丁寧に取り除いてある。もし頭の皮や尻尾が残っていたら、このピーナツ合えは台無しだろう。
自家製のグァバのジュース。ねっとりした飲み口。ご主人は「グァバだけでなく、いろいろ加えている」といっていた。
熱いウコン入りのサンピン(ジャスミン)茶。少し渋味がある。食事の締め括りに合う。
どの料理も手間を惜しまず丁寧に作られており、洗練された味付けには一貫性があった。料理人の料理ではないのがかえって好ましい。南国らしく全体にやや甘めの印象があったが、度数の高い泡盛にはこうした味付けが合うように思えた。
島野菜の炊き合わせの写真からオオタニワタリが抜けてしまったので、お店のサイトからオオタニワタリのある写真を拝借した。
















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