宋敏鎬による詩集『ブルックリン』(青土社、1998年)。
「ブルックリン」
赤茶色のくすんだ煉瓦の建物の間の
殴られた落ち着きに
アジア人は降り立ち
アパートの扉を開けると
紺色の絨毯に白い壁
大切に抱え込みながら
顔を覗かせている
贈り物の時計と声のない背後は
時差を超えている
(以下略)
「九月」
始めることがとても大変なように
ユダヤ人の帽子は黒く
スペイン人の休日はない
固く引っかかるロシア人の老婦人は歩く
とてもゆっくりと広大なこの大西洋で
どこへ
窓ガラスを時折見ることもなく
自分の時計もなく
皆 急いでいる
太く長い飛行機のトンネルを潜り抜け
ここでは身分証明書も捨て去られている
(以下略)
心臓外科医でもある宋敏鎬(ソン・ミンホ)が1995年から1年間ブルックリンの病院で医師として働いた経験がもとになっている。
青土社 ||文学/小説/詩:ブルックリン
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