エセー

ミシェル・ド・モンテーニュ著、原二郎訳『エセー(全6冊)』(岩波文庫、1965~1967年)。序文にあたる「読者に」が興味深い。以下に引用する。 

読者よ、これは正直一途の書物である。はじめにことっておくが、これを書いた私の目的はわが家だけの、私的なものでしかない。あなたの用に役立てることも、私の栄誉を輝かすこともいっさい考えなかった。そういう試みは私の力に余ることだ。私はこれを、身内や友人たちだけの便宜のために書いたのだ。つまり彼らが私と死別した後に(それはすぐにも彼らに起こることだ)、この書物の中に私の生き方や気質の特徴をいくらかでも見いだせるように、また、そうやって、彼らが私についてもっていた知識をより完全に、より生き生きと育ててくれるようにと思って書いたのだ。
(中略)
読者よ、このように私自身が私の書物の題材なのだ。あなたが、こんなにつまらぬ、むなしい主題のためにあなたの時間を費やすのは道理に合わぬことだ。ではご機嫌よう。
モンテーニュにて。1580年3月1日。
(引用はここまで。)

『ミシェル・ド・モンテーニュの肖像』(1570年代)
Portrait of Michel de Montaigne

星の数ほどある(そしてあまり読まれることのない)ブログの多くは、その内容はともかく、つまるところ『エセー』におけるモンテーニュと同じ目的で綴られているのではないだろうか。


File:Portrait of Michel de Montaigne, circa unknown.jpg - Wikimedia Commons

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