彷徨える河

シーロ・ゲーラ監督によるコロンビア映画『彷徨える河』(2015年)。実在の学者の手記をもとに20世紀前半のアマゾンの密林を訪れた学者と原住民(ここでは先住民という表現は使わない)の2つのロードトリップを描く。西洋文明への批判が重要なテーマになっている。原題:El abrazo de la serpiente、英題: Embrace of the Serpent
El abrazo de la serpiente

2つの物語が並行して語られる。1つ目の物語は1909年。ドイツ人の民族学者のテオドール(ヤン・ベイヴート)と従者のマンドゥカ(ヤウエンク・ミゲ)は原住民のシャーマンである若きカラマカテ(ニルビオ・トーレス、写真)に伴われて、アマゾンの密林に神聖な植物ヤクルナを探していた。
El abrazo de la serpiente

テオドール(左)とマンドゥカ(右)。テオドールは重い病気を患い、ヤクルナの薬効に望みをかけていた。
El abrazo de la serpiente

2つ目の物語は30年の時を隔てた1940年。アメリカ人の民族植物学者のエヴァン(ブリオン・デイヴィス、奥)はテオドールの著書に導かれてアマゾンに踏み入り、年老いたカラマカテ(アントニオ・ボリバル・サルバドール、手前)とともにヤクルナを探す。ただ、年老いたカラマカテは部族に伝えられた伝承や自分の過去の記憶をなかば失っていた。カラマカテは自らをチュジャチャキ(無の存在)という。
El abrazo de la serpiente

密林に潜むジャガー。
El abrazo de la serpiente

ヤクルナは架空の幻覚性植物。この作品はモノクロだが、幻覚を映像化した部分はカラーになる。
El abrazo de la serpiente

2023年6月、「コロンビア南部のアマゾンの密林で小型機墜落事故に遭った4人の子どもが40日後に奇跡的に救助された」というニュースに驚いた。原住民の兄弟で、13歳の長女がリーダーになり、生後12カ月の幼児もいたという。子どもながらに密林の中を生き延びる知恵を持っていたのだろう。心から祝福したいニュースだった。


映画『彷徨える河』予告編 - YouTube

水・果物のありかなど先住民の知恵で弟妹を世話…アマゾン墜落後の40日、命つないだ13歳長女 : 読売新聞

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