ジョアン・ジルベルト『三月の水』(1973年)。ボサノバのジョアン・ジルベルトは大好きなミュージシャンだ。そのなかでもこのアルバムは一番よく聴いた。ジョアン・ジルベルトは1969年から2年間、メキシコに移り住み、酒とドラッグの日々を送っていたようだが、この作品では彼本来というか最高の水準に戻っている。原題: João Gilberto。
録音は1972年9月から1973年3月にかけてニューヨークで行われた。ジョアン・ジルベルトの歌とギター、ソニー・カーのパーカッションというシンプルな編成。「イザウラ」ではジョアン・ジルベルトの妻ミウシャがデュエットで参加している。
ちょっと意外なことに、レコーディング・エンジニアはシンセサイザー奏者のウェンディ・カーロスが務めている。ウェンディは1972年5月に性別適合手術を受けているから、女性としての最初の年の仕事になる。マイクを近接させた録音によって、ジョアン・ジルベルトの音楽の密室感をうまく伝えている。
この作品のレコーディングはウェンディ・カーロスがジョアン・ジルベルトに持ちかけたようで、プロデューサーもウェンディの記念碑的アルバムの『スウィッチト・オン・バッハ』(1968年)をプロデュースしたレイチェル・エルカインドが担当している。ジョアン・ジルベルトの最高のパフォーマンスをよい録音で残してくれたウェンディ・カーロスには感謝したい。
João Gilberto - 1973 - Full Album - YouTube
João Gilberto (album) - Wikipedia
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