父・山之口貘

山之口泉著『父・山之口貘』(思潮社、1985年)。詩人山之口貘とその妻、娘との3人の家庭生活を中心とした回想録。著者は山之口貘の娘。

山之口泉著『父・山之口貘』(思潮社、1985年)
山之口泉著『父・山之口貘』(思潮社、1985年)

沖縄行きの歓送会。高橋新吉氏の乾杯発声。1958年9月。右から高橋新吉、泉(娘)、山之口貘、静江(妻)。この沖縄行きは那覇市生まれで20代初めに沖縄を離れた山之口貘にとって34年振りの帰郷だった。
山之口泉著『父・山之口貘』(思潮社、1985年)

「X IV 〈変わりもん〉その性癖」から一部引用(P177)。山之口貘の小一時間もかかる念入りな髭剃りの細微にわたる描写に続く下り。

 こんな風に、父の癖は全て、ゆっくり、念入りに、という要素から成り立っていた。生まれつき体の中に持っているリズムがそうだったのであろう。父の心臓もさぞかし悠長な動き方だったろうと信じてしまえるような父の所作であったが、もうひとつ、潔癖、という癖も見落とすことはできない。ただのんびりしているだけでなく、そこに潔癖が加わるからこそ、父の癖は癖となり得るのであり、父としての個性ともなっていたわけである。〈徹底しろと言ったって 徹底できない僕なんだ〉という父の詩の一節があるが、中途半端なことを嫌い、いつも徹底したがっていたのは、誰よりも父自身なのであった。


思潮社 新刊情報 » 山之口泉『新版 父・山之口獏』
その後新版が出たが版元品切。

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